AV業界はブラック企業よりズーーっと進んでる

6月3日(土)、労働と暮らしのセミナーシリーズで川奈まり子さんの「アダルトビデオ製作の現状と課題」が開催されました。

パワポを使った講演会は、いろんなところで盛んに開催されていますが、それをyoutubeで生配信して、会場聴衆と配信視聴者の両方ヘ、映像・視覚的に優れたコンテンツを届けるためには、かなり高度な技術が必要になります。

スタジオシチズンは、その前身の討論Barシチズン時代を合わせて6年弱の間に蓄積されたノウハウを遺憾無く発揮し、講師も聴衆も視聴者も主催者も、すべてが満足できるよう、設備充実に努めてきました。

今回のセミナーは、その意味でかなりの成果を示せたイベントであったと自負しています。

と、自画自賛の宣伝はこれくらいにして(笑)、本題のイベント内容は今回も結構濃いものでした。

アダルトビデオへの出演強要問題を受けて、出演者、メーカー、プロダクションの三者が、相当前から「業界の体質改善」に向けて一致協力しながら取り込んできた経緯が詳しく語られています。

その中で私が非常に感銘を受けたのが「労働性の排除」というものでした。詳しくは本編をご視聴いただきたいのですが、なにしろ2時間半という大作なので時間が無いという方向けに、私がかいつまんで説明します。

出演強要の因子として、もっとも排除しなければならないのが「雇う側」と「雇われる側」に主従の関係ができてしまうことで、川奈さんはそれを「労働性」と表現されました。

強要があってはならない・・・っていうのは、当たり前の話ですが、表向き「強要」が無いように見えても、「雇われる側」の弱みにつけこんで「雇う側」が不本意な労働を押し付けている現実は、AV業界以外でも、日常茶飯事というか、それこそが「常態」と受け止める認識が、今の社会には蔓延しています。

私が先週のシチズンライブでお話した「不本意労働の常態化」がそれにマッチします。つまり、労働報酬が労働の「不本意性」に対する慰問料になってしまっているという問題です。

川奈さんのお話では、AV業界において出演者は比較的「任意性」が担保されるようになってきたとのことです。つまり報酬に釣られるでもなく、甘言に騙されるでもなく「好きだから」「やりたいから」という理由で、この職業についている人が多いというのです。

これはけっこう衝撃的でした。今の企業で、そういう労働の任意性を重視しているところは極々少数だろう・・・というのが私の認識だったからです。

福利厚生の充実だとか、企業コンプライアンスの徹底だとか、掛け声だけは立派でも、一皮向けば資本が労働者に隷属を強いる構造は、少しも改善されていません。いやむしろ、近年とみに強化されているのではないかとすら思われます。

そんな中で、AV業界(の一部)では「実演者の人権」を如何に守るかについて、結構以前から真剣に取り組んできて、成果も出てきているという話は、希望の持てるエピソードです。

他の業界に比べて偏見の多い業界だからこそ、そうした本質的改革への取り組みは真剣に行われているようで、これは他業種の事業家、労働者にとって「目から鱗」の話ではないでしょうか?

「金のために任意性を犠牲にし、不本意な労働を受け入れざるを得ない」のは、なにもAV出演者に限ったことではなく、ほとんどの業界に当てはまることであり、それを「常態」と考える人が多数を占める現代では、ブラック企業がますます幅をきかせています。

この問題は、業界の真剣な取り組みだけで解決できるものじゃなく、社会構造や経済構造の根本的改革が必要なのは、言うまでもないことですが、だからと言って「世の中の仕組みがそうなっているんだから仕方ない」とばかりに、更なるブラック化に疑問を呈さない他業界の事業家、労働者にとってAV業界(の一部)が取り組んできたこの改革は、少なくともその方向性と理念に於いて「手本」とすべきものだろうと思いました。

シチズンライブでも「経済構造と不本意労働」について、これから具体的な改善案を提議していきたいと考えていますが、今回のセミナーでは、その大きなヒントを得られたような気がします。

6月9日(金)午後6時から生配信開始のシチズンライブでは、このヒントを活かした内容の濃いものとしたいですね(さてさて実現可能か?・笑)。